『現代お笑い論 PART5』 —「1分間ネタ」への順応=一発屋芸人化?

前回(『PART4』)は、2008年にレギュラー放送がスタートした「レッドカーペット」を中心とする「1分間ネタ」の興隆により、お笑いブームは新たな局面を迎えた、ということを述べました。つまり、「1分間ネタ」が<ポスト・第5次お笑いブーム>の扉を開いたのです。

またそこで、「1分間ネタ」番組が興隆すると、<第5次お笑いブーム>における「一発屋芸人」的方法論(=強烈なキャラ+決めゼリフ→強烈なインパクト+笑い)を採用する芸人たちが圧倒的に増えるのではないか?といったような仮説も提起しておきました。

そこで今回は、上記の仮説を確かめてみたいと思います。



まず、「1分間ネタ」番組によって人気が出た/知名度が一気に上がった芸人を列挙してみます。


小島よしお、鳥居みゆきはるな愛世界のナベアツ狩野英孝柳原可奈子、天津木村、我が家、ナイツ、オードリー、はんにゃ、しずる、フルーツポンチ、U字工事ジャルジャルザ・パンチモンスターエンジン、Wエンジン、フォーリンラブ、超新塾、響、ハイキングウォーキングエハラマサヒロ、ピース、ものいい、ハライチetc.


大まかに彼らのネタを抽出し類型化すると以下のようになると思います。


1.強いキャラを生かしたネタ
 ex.)小島よしお、オードリー、はんにゃetc.


2.あるある系(ものまね的)ネタ
 ex.)柳原可奈子エハラマサヒロetc.


3.(予定調和的笑いを生むための)決めゼリフ
 ex.)天津木村、響、モンスターエンジンetc.


4.手数の多いハイテンポネタ
 ex.)ナイツ、超新塾、ハライチetc.



もちろん、上記の類型はそれぞれ独立しているものではありません(例えば、フルーツポンチは1と2、Wエンジンは1と2と3の複合など)。
また3は、ほとんどの芸人が用いていると言っても過言ではないでしょう。


さてもうお気づきの通り、1〜3は、<第5次>における「一発屋芸人」的方法論とほとんど同じものであります。
このことから、先の仮説(=「1分間ネタ」は、かつての「一発屋芸人」が用いてた方法論の興隆をもたらす、という仮説)は確からしいと言えると思います。

しかし、ここで注目してほしいのは、4の「手数の多いハイテンポネタ」です。
近年、特に漫才の世界において、この「手数の多いハイテンポネタ」を採用する芸人が増えており、実際彼らが「本格派」や「正当派」などと呼ばれることが増えています。

ここで近年(2007年以降)の「M-1」のベスト3を見てみましょう。


<2007年>
優勝 サンドウィッチマン
2位 トータルテンボス
3位 キングコング


<2008年>
優勝 NON STYLE
2位 オードリー
3位 ナイツ


<2009年>
優勝 パンクブーブー
2位 NON STYLE
3位 笑い飯


2008年2位のオードリーを除いて、いずれも非常にテンポが速く、ボケの手数が非常に多いネタを特徴としています(特に、近年毎年優勝候補に挙げられるナイツは、1つのネタ(3分間)中に30回以上ボケる、とも言われています)。
また、2007年の上位3人より、2008、2009年の上位3人の方が確実にボケの手数が増えているように感じられます。


このように、「1分間ネタ」は「一発屋芸人」化を加速させる一方で、漫才の「ハイテンポ」化も加速させている、と思われます。

さて次回は、そもそもなぜ「ショートネタ」が流行っているのか、ということについて述べたいと思います。